こんにちは、アドラーです!
今回は「QC検定1級論文対策シリーズ」として品質不良を防ぐために必要なこと3選をまとめました。
私のQC検定1級の合格体験談で紹介したようにQC検定では30分で750字の作文を書く必要があり、QCの本質を理解していることが重要です。
今回の記事では以下の書籍を参考にしながら、品質不良を防ぐための考え方を紹介していきます。

QC検定の論文対策をしたい方
自分の仕事をよりレベルの高いものにしたいと考えている技術者
にオススメの記事となっていますのでぜひご覧ください!
【筆者の簡単なプロフィール】
出身 | 東工大修士卒|関東育ち |
業界 | 大手メーカー |
職種 | 研究開発|平社員 |
社会人年数 | 5年目 |
勤務地 | 西日本|地方田舎 |
詳細なプロフィールは自己紹介からご覧ください!
目次
はじめに:QC検定対策シリーズとは?

本ブログの読者層を分析すると「QC検定の合格体験談」を見に来てくださっている方が多いことがわかりました。
試験におすすめの参考書や勉強の方法は体験談に書きましたが、QC検定1級や実業務への適用を考えると単純な公式・文章に留まらず本質的なQCの理解が必要です。
本シリーズではQC検定1級に合格して実際にQCを開発業務に活かしている筆者が、QC検定1級の合格や実業務で重要と考える考え方・知見を紹介していきます。
QC検定の合格は勿論、普段の業務の改善に活かしてもらえると幸いです。
QC検定1級の論文試験は本質的な問いが多いので、普段の業務から品質改善を意識していると論文が書きやすいと思います!
「品質」とは何か?

突然ですが、「高品質」とはどういう状態を想像するでしょうか?
- 図面、仕様書の通りに作られていること
- トラブルが起きないで期待性能・寿命を全うすること
- クレームが起きないこと
など、様々な考え方があるかと思います。
本書では、品質は以下のように書かれています。
品質とは「顧客の満足を得ること」である。
トヨタ必須の17の品質管理手法を伝授 品質の教科書 [ 皆川 一二 ]
ここでいう顧客とは、「後工程すべて」を指します。
後工程とは何か?具体的に見ていきましょう。
例えば、伝統的な製造業では以下のようなバリューチェーンを通じて顧客に製品・サービスが行き届きます。

研究開発部門の場合、特に後工程は購買・生産・物流・販売・アフターサービスと多岐にわたります。
後工程を意識すると、「高性能の製品開発」をするときに以下のような考え方をすることが重要になるでしょう。
- 購買部門が調達で苦労しないように原材料がマルチソースで購買できる材料であるか確かめよう(BCP対応)
- 新製品は性能が大幅に向上するけれど、製造コストや生産性には問題がないか製造部と確認しておく必要があるな。早めにすり合わせをしておこう。
- 新製品の技術は確立できたけれど販売戦略とか事業採算性を早めに営業部と確認しておこう。
- この新製品は従来の製品と違う付帯部品を使ったアフターサポートが必要になるな。テクニカルサービス部門に新しい部品の使い方を教えて、おかないといけないな。
このように、技術者は直接関わる後工程だけではなく仕入れ先からエンドユーザーまですべてのバリューチェーンを考えることで初めてビジネスとして成立する製品・サービスをお客様に届けることができます。
特に研究開発部門は、後工程が多岐にわたるため自身が開発した製品が後工程にどのような影響を与えるか想像する、気づくことが重要になります。
研究開発部門の仕事は後工程への影響が大きいので、特に品質に気を配った仕事が求められますね。
「品質不良」が生む3つの損失

では、前章で解説した品質が守られなかったらどんな結末を迎えてしまうでしょうか?
本書では、
①不具合品回収の損失
②恒久処置コストの損失
③機会の損失
が挙げられています。
①不具合品回収の損失:リコール・不良品の回収コスト

品質不良が発生すると、不良品の回収が必要になります。
不良品の回収は営業・テクニカルサービス部門などが担当することになると思いますが、通常の販売業務に加えて不良品の回収を行わなければなりません。
自動車を例に考えてみると、自動車1台でのリコールコストは数万円に及びます。
これが仮に1万台起きれば、リコールコストは総額数億円にも達します。
これは目に見えるコストですが、品質不良のコストは次に紹介するような「目に見えないコスト」も存在します。
特に海外顧客とビジネスをしていれば、英語や円安によって対応の難易度・コストは大幅に高くなります。
②恒久処置コストの損失:原因究明と対策のコスト

①は「応急的な是正措置」でしたが、次に「恒久的な是正措置」が必要になります。
この段階では主に技術開発部門を中心に「原因究明」、「原因への対策立案」、「効果検証」などを行います。
プロトコル・マニュアルに沿って開発をしていたとなれば、「開発手法に何らかの欠陥があったこと」を意味しているので、開発手法の欠陥を一つずつ仮説を立てて確認していく必要があります。
簡単に効果検証ができれば良いですが、大体は新しい評価手法を検討するところから始まるので原因究明には数ヶ月、下手をすれば年単位の時間を要します。
当然新製品の開発などはストップせざるを得なくなるので、恒久処置の検討は必要なステップですが、将来的な機会損失に繋がることは認識しておかなくてはいけません。
私もこの「恒久措置」を検討したことがありますが、顧客の製品使用条件を英語で確認する必要があったので、そもそも検討するハードルが高いように感じます。恒久措置を講じる必要がないように開発段階から製品欠陥を見抜くことが重要です。
③機会の損失:顧客からの信頼失墜のコスト

顧客の目線に立ってみると「不良を起こす製品の購入はしない!」と考えるので、販売やブランドに負の影響が及ぶ可能性があります。
自分がお客さんだったら、不良品を出す会社とは取引したくはないですよね。
新規顧客開拓の労力は既存顧客を維持する労力の5倍にも及ぶというデータがあります。
このことから、既存のロイヤル顧客からの信頼を維持することの重要性がわかっていただけるかと思います。
このように目に見えるリコール費用の損失ではなく、品質トラブルでは将来的に大きな機会損失につながってしまうことは技術者も強く認識しなければいけません。
品質不良を防ぐための2つのポイント

品質の概念や品質不良が招く損失をこれまで学んできましたが、どうすれば品質不良を防ぐことはできるでしょうか?
書籍と私の経験から特に重要だと思う2つのポイントを紹介します。
①現場を見に行く(3現主義):多面的な情報が得られる!
3現主義とは「机上の空論ではなく、実際に“現場”で“現物”を観察し、“現実”を認識した上で問題解決を図るという考え方」のことを指します。
現代はデータの時代とも言われますが、「そのデータが生み出されている現場」を自分の目で確かめたことはあるでしょうか?
現場の強さ=企業の強さであり、利益を生み出せるかは現場が生み出す製品の力と言っても過言ではないでしょう。
情報化がどれだけ進んでも、その製品の良し悪しを判断するのは「人」であるという事実は今後も変わらないでしょう。その中で、データが生み出されている現場の状態を自分の目で見て改善することができる人材は今後も貴重と思います。
品質トラブルは会議室ではなく、現場で起きています。
オフィスでデスクワークするだけでなく、現場の課題感に寄り添い改善に向けて行動できる技術者でありたいですね。
品質(Quality)に余裕を持った設計を心がける
多くの場合、研究開発ではQCD(品質・コスト・納期)のトリレンマを抱えていることと思います。
QCDにおいて特に上市段階で考えなければいけないのは、品質(Quality)になるでしょう。
というのも、前章で述べたように品質は一度信頼を失ってしまうと挽回が困難です。
オーバースペック気味でコスト高で上市したとしても、コストダウンや納期の改善は上市後の細かな技術開発で改善の余地があります。
品質不良は不良品回収・恒久措置・機会の損失コストを抱えていることを思い出し、将来的な損失を回避するためにもまずは品質を優先して開発し、長期的にコストや納期を最適化していくことが現実的でしょう。
納期やコストを念頭には置くものの、まずは品質を優先した開発をすることを心がけましょう。品質とスピードを両立する開発する手法も存在するので、次回記事にしたいと思います。
まとめ
- 品質とは「顧客の満足を得ること」である。
- 品質不良は不良品回収・恒久措置・機会の損失コストを抱えている
- 品質に余裕を持った設計と3現主義の徹底を心がける。
今回の記事を参考に今後のQC検定1級に合格していただければ、筆者としてこれ以上ない喜びとなります。
是非私の記事を参考にしていただき、試験に合格された時は連絡をいただけると嬉しいです!
それでは最後に、私の大好きなドラえもんの言葉で今日の記事を締めさせていただきたいと思います。

「なやんでるひまに、一つでもやりなよ」
— ドラえもん
今日もありがとうございました!